では、その将棋盤に右上から数字を振ってみましょう。
縦に1,2,3,…と振り、下まで行ったら左隣の上からまた数字を振っていきます。
そしてその数字が奇数のマスをOS(Odd numbers Square)、偶数のマスをES(Even numbers Square)と呼ぶことにします。

OSは41マス、ESは40マスあり、OSのほうが1マス多いことがわかります。
またOSは角の初期可動域(初期配置の角が行けるマス)でもあります。
角は斜めにしか動けませんから、角交換をするか馬に成るかしない限り、
OS上しか移動できず、ESへ行くことはできません。
これらのことが将棋の法則に深くかかわっているのではないかというのが今回の私の考察です。
◎ES仮説「ES上に配置された駒(特に玉、飛、金)は良いポジションである」
ここで玉、飛、金の3種の駒を「ESP(ES Pieces)」または「ES駒」と呼ぶことにします。
例として、良い形とされている囲いや攻め駒の配置を見てみましょう。
矢倉4六銀3七桂型

横歩取り青野流

横歩取り8五飛

美濃囲い

高美濃囲い

銀冠囲い

雁木囲い

船囲い

松尾流穴熊

右玉

石田流三間飛車

角換わり2九飛

というように、ESPがES上に配置された駒組みは多くの場合で定跡化され、
良い形とされていることが見て取れます。
●理由
それはなぜなのか、考えられる理由が以下の二つです。
理由@相手の角に取られるリスクを軽減することができる。
理由A自分の角の効きを遮らないことで、角の可動域を増やすことができる。
理由@について
玉はもちろん取られてはいけない駒であり、
飛車は角との交換は望ましくないというのはある程度理解できます。
また飛車は角に狙われた場合に、斜めの利きがないため途中に駒を配置して遮断するのが難しい駒です。
金というのは一般的には角よりも弱い駒であるとされていますが、
近年のコンピュータ将棋の発展により、
中終盤においては角を切って金を削る手が有効であることが明らかになってきています。
角は初期状態においてOS上に移動が制限されています。
またOSはESよりも1マス多いこと、特にセンター9マスにおいては OS:ES=5:4 でありその比重は大きくなります。
将棋のセンター9マスは角の働きが最も高くなるポジションと考えられますから、
角という駒はESよりもOSにいた方が良い場面が多い(角はOS上にいることが想定される)ということが予想されます。
〇角の移動可能マス数分布

角は盤の中央に近づくほど働きが良くなる
理由Aについて
「序盤は奇数筋の歩を突け」という格言もありますが、
自分の角を生かすためにはOS上に駒を置かないことが有効です。
これは特に、角を交換しない戦術においてもっとも有効であると予想されます。
また逆説的に予想するならば、角交換してES上に角打たれた場合、
OS上にES駒を配置するのが良いかもしれません。
●例外について
例外として、OS上にESPが配置される理由について考えます。
OS上にESPを配置する場合、
その駒が角で狙われた場合にその利きを遮断する駒(Bishop Interceptor)が存在する必要がありそうです。
この考え方を「BI理論」と呼ぶことにします。

例えば松尾流穴熊の場合、玉は9九のOSにいますが、その右斜め前に銀、角、歩と3枚の BI が存在します。
この場合はOS上にいるリスクよりも玉が遠いリターンの方が大きいのかもしれません。
通常の美濃囲いの場合、玉は8八のOS上におり、 BI は7七歩の1枚です。
この場合、角で攻撃された場合に弱い囲いであると言えそうです。

こういった攻めに弱い。
BI の駒種についてですが、銀、桂、歩であることが多いです。
特に銀はOS上に配置されやすい駒であり、角との交換に強い駒なのかもしれません。
また BI の枚数については2枚以上が望ましいと思われますが、
金に関しては1枚で足りていることが多そうです。
よって、駒組の際にESPをOS上に配置する場合、
2枚以上の BI を配置できればそのリスクを軽減でき、
有効なポジションにできると考えられます。